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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)1102号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人及び補助参加人の上告理由第一点について。

原判決が本件署名が有効であることの確認を求める原告の請求部分を不適法として却下したことは所論のとおりである。しかし、上告人は、民訴二二五条に基いて出訴しているのではなく、地方自治法七四条の二第八項によつて出訴していることは明らかであり、同条項による出訴においてはかかる署名の有効であることの確認を求めることも当然許さるべきものと解するを相当とするから、この点に関する原判決の判断は所論のごとく失当であるといわなければならない。しかし、本件では署名の有効確認を求める訴は、決定の取消を求める訴と同じく訴の利益が失われたものであつて、その請求は棄却を免れないと解すべきであるから、所論は、結局原判決を不利益に変更することに帰し、採るを得ない。

同第二点ないし第四点について。

しかし、訴訟当事者は、本案訴訟の適否にかかわらず判決当時において裁判所の判断を求める法律上の利益がある場合においてのみ裁判を受ける権利を有するものであるから、原判決の確定したように昭和三四年六月八日判示条例廃止の条例案が可決され同月一三日公布された以上同日以降本訴請求をなす法律上の利益がないものと認めこれが請求を棄却した原判決の判断は正当であつて、所論の違法は認められない。

同第五点について。

しかし、原判決は、訴訟費用の負担について民訴八九条、九〇条、九四条に従つたものであつて、所論特例法一一条によつたものでないこと明らかである。しかのみならず、本件上告は理由が認められないから、訴訟費用の裁判に対する本論旨は許されないこと当法廷の判例とするところである(民事判例集八巻一号三〇八頁以下)。

同第六点について。

しかし、本件条例公布に関する原判決の事実認定は、挙示の証拠により肯認できないことはない。されば、所論は、原審の裁量に属する証拠の採否又は原判決に影響を及ぼさない証拠の表示方法を非難するに帰し、採ることができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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